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新潟市江南区の怪異譚・蝸牛様

蝸牛(かぎゅう)様は、江戸時代の沢海(そうみ)藩のお家騒動が基になったカタツムリの怪異譚である。
蝸牛様は、人々の信仰対象であり、特定のカタツムリの妖怪を指すものではない。

江戸時代、現在の新潟市江南区沢海に沢海藩という藩が存在した。
三代目の藩主が亡くなったが、その子供が早世をしていたため、四代藩主として養子を迎えることになった。
その際に共に家中に入った佐川佐内という人物が家老になった
佐川は四代藩主から忠臣を遠ざけて、酒や遊びに溺れさせた。
そして、庶民には重税を課して悪政が行われた。

この状況に危機感を覚えた沢海藩士たちは、悪政の主犯である佐川を打つことを決意した。
ある夜、藩士たちは佐川の寝込みを襲って、佐川に対して処刑を行った。
処刑される寸前に「我が魂は幾千万の蝸牛(カタツムリ)となって、畑を食い荒らす」と佐川は言い残した。

処刑の後の翌年に佐川の予言の通り、無数のカタツムリが現れて、村々の田畑を荒らすようになった。
人々はこれを佐川の祟りと思って恐れた。
そこで人々は佐川の怨霊を鎮めるために、沢海にある焼山に小さな石の祠を建て祀った。
それから幾千万のカタツムリは現れることがなく、村々に平和が訪れた。

この石の祠は現在も新潟市江南区に存在して、地元の人に蝸牛様として親しまれている。
4月の下旬には、蝸牛様のまつりが地元で開かれている。

以上が蝸牛様の逸話である。
ただし、歴史史料上では佐川佐内という人物は確認されていない。
逸話がまとめられた物語集の史料上には、佐川が確認はされているものの、藩の史料などからは佐川という人物は確認されていない。
つまり、佐川は架空の人物である可能性がある。
もちろん、今後研究が進んだり新たな史料が発見されたりすることによって、佐川の存在が確認される可能性もある。

佐川佐内が実在していたかどうかはともかくとして、怪異譚に登場する物が現在においても実地に実在しているのは、とても珍しいことである。
たいていの怪異譚や妖怪話に登場する物は、実際に現代においても残されていない或いはないことが多い。
それを考えると、怪異譚に登場する物が現代においても残されているのは極めて稀と言わざるを得ない。
実際に現地で祠を見て、蝸牛様の怪異譚に想いをはせてみるのも良いかもしれない。

 

 

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