新潟県の魅力を発信します!

このブログは、①新潟県の魅力の紹介と②弊著へのご感想とご意見、ご質問の受付を目的としています。

新潟県阿賀町の怪異譚・狐火と狐の嫁入り

f:id:niigatameisan:20210516225126j:plain


新潟県の東に位置し、福島県と隣接する阿賀町(あがまち)には、狐火(きつねび)と狐の嫁入りの怪異譚が残されている。
阿賀町には麒麟山(きりんざん)という険しい山があり、麒麟山は世界で一番多く狐火が発生するとされている。
(余談だが、麒麟山の名前をとった日本酒『麒麟山』を阿賀町の酒造メーカー・麒麟山酒造が販売している)

https://amzn.to/2NASMVZ

また、阿賀町では狐の嫁入り行列の言い伝えも残されていて、この伝承をもとにしたイベントも毎年開催されている

狐火は、怪火の一種で、十個から数百個の火の玉が行列をなして夜に現れる。
火の気のないところに狐火が現れ、空中を浮遊し、火が消えたり付いたり、数が増えたりするとされている。
狐火のなす行列は、一里(約4キロメートル)になるともいわれている。
狐火の色は、赤色であることが多いとされている。
狐火にいくら近づこうとしても、その途中で火が消えてしまうとされている。
春から夏にかけて狐火が出没し、沖縄県を除く、日本全国で狐火が目撃された。

なぜ「狐」火と呼ばれているのかは諸説あるが、文字通りキツネと関係する説が多い。
キツネの吐息が光っているという説、キツネが尾を打ち合わせて火を起こしているという説などがある。

狐火の正体は全く不明である。
リン(燐)の自然発火、石油の発火、光の屈折など様々な説があるが、現代においても狐火の正体は解明されていない。
(リンの自然発火から狐火は燐火とも呼ばれている)

こうした狐火の行列が、狐の嫁入りとも呼ばれている。
一里にも及ぶ狐火の行列が、嫁入り行列の提灯行列に似ていることから、狐の嫁入りと呼ばれるようになったとされる(諸説あり)。
狐の嫁入りは、晴れなのに雨が降る天気雨のことも指すが、ここでは天気雨ではなく、狐火の行列と不思議な嫁入り行列を解説していく。

狐の嫁入りは、狐火の列であり、日本各地で目撃談がある。
江戸時代においても新潟県では、『越後名寄』という書物で狐火の列が記録されている。
目撃談は、比較的近年にも残されており、昭和期の農村で狐火の列を目撃したという目撃談も多い。
かくいう筆者の母方の祖父も新潟県の農村で狐火を見たという。

新潟県阿賀町では、麒麟山で狐火とその列が世界で一番多く目撃された。
そして、昔の嫁入り行列は、夜に行われたため、提灯を手に持って行列をなした。
その様子と狐火の行列が似ているように見えたことから、狐の嫁入り行列と呼ばれるようになったとされる。

そのような話が阿賀町では古くから伝えられ、町おこしとして狐の嫁入りイベントが開催されている。
1989(平成元)年に新潟県JR東日本が企画した「デスティネーションキャンペーン」が元となり、翌年の1990(平成2)年から阿賀町で第一回の狐の嫁入り行列」が開催された。
行列の参加者、観光客、街の人々がキツネの化粧をして、花婿と花嫁の結婚行列を作り、街道を歩くというイベントである。
1990年から毎年5月3日に開催され、5万人ほど観光客が訪れる一大人気イベントとなっている。

「きつねの嫁入り2014  新潟県 阿賀町(旧 津川町)」(狐の嫁入り行列イベントの様子)
https://www.youtube.com/watch?v=acjlx8HW21E 

阿賀町の狐の嫁入り行列では、狐火の列ではなく、人がキツネに扮した嫁入り行列だが、狐が人に化けたり、狐が人のように嫁入り行列を作ったりした言い伝えが日本の各地で古くから残されている。
江戸時代の有名な絵師・葛飾北斎の作品にも、狐が人間のように和装をして二足歩行を行い、嫁入り行列を行う絵が残されている。
日本各地で狐が人のように嫁入り行列を作ったという伝承があり、人間がそれを見てしまってはいけないともいう。
そうした狐同士の結婚だけでなく、狐が人に化けて嫁ぐという話もある。
狐が男の妻に化けて、夫婦生活を営んだ話も残されている。

さきの葛飾北斎の絵はもとより、古くから狐の嫁入り行列は様々な作品の題材にもなっている。
江戸時代には、狐の嫁入り行列を時系列順に描いた橘岷江(たちばなみんこう)作の「狐廼嫁以李(きつねのよめいり)」という絵も残されている。
近年においては、黒澤明監督作の『夢』(1990年公開)という映画作品で狐の嫁入り行列が登場する。
その様子は、神秘的でもあり、不気味でもあり、怖さと神々しさが共存するような名シーンである。

Akira Kurosawa Dreams 1990」(『夢』の狐の嫁入り行列シーン)
https://www.youtube.com/watch?v=ZLDjQr8OrYQ 

このように新潟県だけではなく、日本各地に狐火と狐の嫁入り行列の伝承が残っている。
キツネは古来よりネズミを食べる益獣として農村ではありがたられた動物である。
そして、産業時代の都市化が進むまでは、日本のほとんどは農村であった。
つまりは、農村に住む昔の人々と狐は密接な関係にあり、それが多くの狐に関する怪異譚や稲荷信仰を生み出したのだろう。

©新潟名産品商会2017-2024
本ブログ内の文章の転載を堅く禁じます。