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新潟県の妖怪 ヤサブロバサ(弥三郎婆)

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ヤサブロバサ(弥三郎婆とも)は、人を喰う鬼婆の妖怪である。
元々は、弥三郎の家のおばあさんで、普通の人間であった。
その弥三郎の家のおばあさんが妖怪になったために、ヤサブロバサと名付けられた(ヤサブロ(ウの)(オ)バ(ア)サ(ン))。

ヤサブロバサは、吹雪に乗ってやってきて、悪い子をさらって食ってしまう。
また、悪い事をした人間が亡くなると、その死体を弥彦村の寳光院(ほうこういん)にある婆杉(ババスギ)の枝に引っ掛けて晒しものにしたという。
こうして人々に恐れられたヤサブロバサだが、大僧正の説教により、子供を守る神の妙多羅天女(みょうたらてんにょ)となった。

このような事柄から、新潟県の魚沼地方では、「ヤサブロバサがやってきて悪い子供をさらっていく」という言い伝えがあり、子供たちに恐れられた

ヤサブロバサが、どうして普通の人間から鬼婆に変わってしまったのか。
それには諸説あり、また、新潟県内各地や山形県などにも様々な説が残されている。
説が多くて紹介しきれないため、その一部の説を紹介する。

一つは、弥彦神社上棟式での争い説。
ヤサブロバサは、弥彦神社の鍛冶の棟梁の黒津弥三郎の母だったが、上棟式で大工との争いに負けた屈辱から餓死をしてしまい、鬼婆になったという。
この黒津弥三郎は実在したと思われ、その末裔の黒津家が弥彦に在住し、妙多羅天女の描かれた掛け軸を所蔵している。

もう一つは、孫を食べた説。
ヤサブロバサに孫が生まれたが、あまりにも孫が可愛かったために、孫を舐めているうちに食べてしまい、鬼婆になってしまったという。
この孫を食う話には、別のパターンも存在する。
親が亡くなり、後に残された孫も亡くなり、孫の亡骸をヨサブロバサが食べて鬼婆になったという話もある。

もう一つは、化け猫説。
化け猫が弥三郎の母に化けて、狼の群れを率いたが、腕を切られたという。
その他にも、ヤサブロバサが猫や狼に纏わる話が各地に残されている。


このようにヤサブロバサには様々な逸話が残されている。
また、新潟県にはヤサブロバサに纏わる史跡などが残されている。

その1つは、寳光院の婆杉。
悪人が死んだあとにヤサブロバサが寳光院の婆杉に吊るしたといわれる杉だが、これは弥彦村の寳光院に実在する。
杉の樹齢は1000年といわれ、杉の高さは40メートル、胴回りは10メートル余りと大きい杉である。

また、寳光院では、毎年10月15日にヤサブロバサがなったとされる妙多羅天女の像が開帳される。
妙多羅天女の像は、全体が黒っぽい色をしているが、目だけには色があって目立ち、胸のあばら骨や乳房が見え、とても不気味な雰囲気である。

南魚沼市には、「弥三郎バサ腰掛け岩」が存在する。
これは文字通り、ヤサブロバサが腰を掛けて休んだという岩である。
大人が腰を掛けて休むにはちょうどいいくらいの大きさの岩である。

また、魚沼市には町おこしとしてヤサブロバサの名前を冠した蕎麦屋が存在する。
「権現堂の弥三郎婆」という名前の蕎麦屋で、店の前の看板にはヤサブロバサのイラストが描かれている。

このように、ヤサブロバサは新潟県で多くの逸話や史跡が残り、町おこしの題材としても親しまれている存在となっている。

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